市川市議会の切手問題を解説~きっかけから小泉市議の辞任まで~

市川市議会を震撼させた切手問題。

そのきっかけとも言える小泉文人議員がついに辞任し、事実上決着がついた形に。

今回は改めてその切手問題を一から解説していきます。

 

切手問題の概要

政務調査費を私用に流用したことが問題視されています。

政務調査費は議員に、月数万円支給されています(金額は自治体によって異なり、市川市議会は月8万円)。

あくまで議員活動にしか使ってはいけません

しかし議員にとっては、「議員活動で8万円を使い切れない時がある(残った分は返還する)」「いちいちいくら使ったかを記載したり、領収書を保存したりするのが面倒」といった側面があります。

そこで!

【市民生活調査のためのアンケート用切手】としてまとめて購入し、あとで換金すれば、全部自由に使うことが出来ちゃう作戦が生み出されました。

当然違法です。

この問題をめぐり、市川市議会は大いに揉めたのです。

 

 

2014年8月 切手の用途を市民が住民監査請求

政務調査費をどう使ったのかは公表しなければなりません。

しかし、いちいちそんなものをチェックする市民なんていません…

と思いきや、しっかりと隅から隅まで目を通した方が「一部の議員達、切手買いすぎじゃない!?」と気が付きます。

 

政務活動費を使って切手を購入する場合、用途は「アンケートの実施」や「会派の広報誌の郵送」等に限られ、個人のチラシや市政報告には使ってはいけません

そもそも、普通は郵送物を郵便局にもっていけば、切手を貼らなくても郵便局で処理してくれます

そのため、数枚程度ならまだしも、何千・何万枚と郵送をする場合は、切手を購入する必要がないのです。

 

にもかかわらず、「大量に切手を買っている…怪しい!!住民監査請求してやる!」となったわけです。

※住民監査請求とは、お金の使い方がおかしいから、ちゃんとチェックして、おかしいところがあれば改善してねと、市民から要求することです。

 

 

市川市議会の切手問題を見つけたのは堀越晃彦氏

中々トリッキーな経歴をお持ちの方で、元総務省職員で、那須塩原市の市議補選に落選。

その後、市川市議を目指して市川に移住。

切手問題をぶち上げて、その実績をアピール。

2015年の市川市議選に立候補という流れだと思われます。

 

住民監査請求の結果、「議員達は皆、適正な使い方しかしてないから大丈夫だって言ってるから棄却」という意味不明な結論に至ります。

その結果?堀越氏は市川市議選に落選します。

 

しかし!

ここから事態は大きく動きます。

 

この切手問題、堀越氏の手を離れ、政争に利用されることになるのです。

 

 

当時の市川市議会の勢力図

市川市議会のグループは大きく分けて6つ。

・自民系(無所属保守系含む)主流派

・公明党

・自民系反主流派

・リベラル系(民主党・社民党・労働組合系)

・共産党

・無所属系

 

この中で、特に主導権をめぐって

【自民系主流派】 vs 【自民系反主流派・無所属系】

という形で争っており、主導権を握っていたのは自民党主流派の方でした。

現に、当時の議長も副議長も自民党主流派でした。

 

その自民党主流派が切手問題で追及されたのです。

そのため、自民党反主流派や無所属系がこの切手問題を使って自民党主流派を追い落とすことを画策します。

 

 

2014年12月 議長と副議長がバックれ!

自民党反主流派や無所属系が、市議会でもこの切手問題を追及します。

さらに追及の手を強めようと、100条委員会の設置を求めます。

※100条委員会とは、調査だけでなく、関係者の証言や証拠の提出を請求し、虚偽の証言などをした場合には罰則を与えることが出来るというものです。

 

設置には議会の承認が必要なのですが、【無所属(提案者)・自民党反主流・リベラル系・共産党】が賛同し、2014年12月の議会の最終日で設置予定でした。

しかし!

100条委員会設置を嫌がった自民党主流派は驚くべき戦法に出ます。

議長(岩井清郎氏)と副議長(松永鉄平氏)がバックれ、議会は流会となり、100条委員会は設置されなかったのです。

 

政治家とは思えない力技ですよね!?

もっとスマートな方法はなかったのでしょうか…

この衝撃的な事件によって、(号泣県議として有名な野々村氏の政務活動費不正受給問題があらわになった後ということもあり)かえって全国的に注目を集めることとなります。

 

 

2つの100条委員会という泥沼の殴り合い…

結局100条委員会は設置されることとなったのですが、調査対象となった自民党主流派議員達が「お前たちも政務調査費の使い方におかしいところあるだろう!」と、自民党反主流派や無所属系を調査対象とした100条委員会を設置。

お互いに殴り合う泥沼の展開に入ります。

※ここで岩井議長が辞任し、自民党反主流派の宮田氏が議長に就任します。

 

さすがに混乱がひどくなったため、市長が乗り出さざるを得なくなります。

※本来、市議会は行政のチェック機関なため、市長が干渉とかしちゃいけないはずなんですけどね。よほどやばい状況だったのでしょう。

外部の公認会計士による監査が行われることになりました。

 

 

2015年3月 外部監査の結果

ほぼ全員が大なり小なりおかしい部分(数量や品名の記載漏れ等も含む)があり、その合計が2,134万円にのぼるという結果に。

ただし、「不正があったとまでは言えず、不正部分を自主返還するかどうかは各議員の自主判断とする」という大久保市長の裁定になりました。

要は「みんな悪い部分があったんだからこれで手打ちにしようよ!」って意味ですね。

「さっさとこの問題を終わらせたい」という大久保市長の本心が垣間見えます。

 

この監査を受け、多くの議員は返納を表明しました(結果的には1,000万円程度が返納されたと記憶しています)。

まぁ市議選が来月まで迫っていましたからね。

少しでも好感度を上げておこうということだと思います。

 

そしてこのまま2015年4月の市議選になだれ込みました。

切手問題の決着はあやふやなままで。

このままで終わるのかと思いきや…

 

 

2015年6月 再び100条委員会設置へ

多くの議員達が政務活動費を返納したり、使い方に誤りがあったことを謝罪しましたが、これらを完全にスルーしていた小泉文人氏と鈴木啓一氏。

市議会はこの2人を対象にした100条委員会を設置します。

論点は、切手を本当にアンケート調査に使ったのか?です

 

ちなみに、鈴木氏は落選しましたが、小泉氏はトップ当選。

しかも前回と票数はほとんど変わらず、2位にダブルスコア近い差をつけての勝利でした。

ほとんど影響がなかったことにびっくりです。

 

調査の中で、青山氏と松永鉄平氏も怪しいされ、計4名が調査の対象となりました。

 

 

青山氏の暴露と白状

今まで4名とも、「アンケートは実施した」「換金してない」と主張していたのですが、突如青山氏が「同じ会派だったけどアンケート調査をしていたことはない」「我が家も送付先に入っているけど、届いたことない」と暴露。

さらに、「小泉議員から、『政務活動費の清算なんて面倒くさいことをする必要はない。切手を買って換金すればいい。みんなやっている。』と言われた」とさらなる暴露をかまします。

そして、「購入した切手を個人の後援会の会報を送るのに使ってしまった」と白状。

 

追及に耐え切れなくなったんですかね。

これまでダークグレーで押し通してきましたが、自ら黒であると白状しました。

 

 

2016年9月 青山氏への辞職勧告と小泉氏への問責決議

自分で黒と認めた青山氏へは辞職勧告(強制力はないのでどうするかは本人次第。青山氏は辞任せずに続けることを選択)。

未だ宮迫さんばりのダークグレーだった小泉氏へは問責決議(責任を問う事。要はお前議員としてどうなのよって意味です)。

 

結果的に不正をしていたのはほぼ確実であるとみられつつも、決定的な証拠がなく、この辞職勧告と問責決議をもって100条委員会は役目を終えました。

ダークグレーでも黒だと本人が認めていない事、ぶっちゃけ同じようなことをしつつも、ちゃっかり議員を続けている方が沢山いる(名前はあえて出しませんけども検索すれば結構出てきますよ)ので、このままかなーと思っていました。

ところが!

 

 

2017年10月 小泉文人氏 市議会議員を辞職

小泉氏の議員辞職勧告決議案が採決予定だった2017年10月。

採択される前に、突如小泉氏が市議を辞任されました。

 

この件については、ほとんどの議員さんが口をつぐんでいます。

この切手問題について、うるさいくらいに情報発信していた方でも、「小泉議員が辞任しました」と淡々と事実を伝えるだけ。

こうなると逆に下種に勘繰りたくなりますよね。

 

結果的に、「元凶といっていい小泉氏」と「政治家とは思えないほど正直者な青山氏」の2人を袋叩きにして収束しかかっている切手問題。

「2人と同じようなことをしてた方々」と「政敵の弱みに付け込んでの勢力争いに異常に熱心な方々」との間で何かしらの妥協案が成立したのでしょう。

政治の世界って怖い…

 

 

5 COMMENTS

まさ

いつも楽しく読んでいます。さて、小泉氏が辞めるのは遅きに失する気がしますが、辞めてよかった。
ところが、市長選に立候補する意向との噂を聞き耳を疑いました。
政務活動費を流用するだけでも許されることではないのに、他の議員に不正の手口を伝授した主犯です。
何のお咎めもなく議員辞職だけで済むのでしょうか?
号泣県議で知られる野々村氏は辞職後、政務活動費を返還し裁判になりました。
警察は何をしているのでしょうか?
ぜひ彼を捕まえてください!

京ぱん

ここに書き込む事項ではありませんが、
市長選と同時に行われる、
市川市議会議員補欠選挙(定員2名)の立候補予定者紹介を事務的で良いのでお願いしたいです。
所属政党があれば政党、氏名、顔写真程度で良いので・・・。
市長選の時みたいに詳らかにする必要は無いので・・・。

京ぱん

小泉文人氏が市川市長選挙に立候補されるそうです。
https://www.facebook.com/fumito.koizum/posts/695862690612267?pnref=story

とても驚いています。
この切手問題での市議辞職は自らの引責辞任じゃなかったのかな・・・。
ある意味、厚顔無恥というか、とても厚かましいというか、有権者をなめている気がするのですが、?
今回ばかりは立候補しないか、市議補選で出直しした方が良い気がしますが・・・。
皆様どう思われますか?

こば

市川市市長選挙が近づき、情報を集めている際にこのサイトを見つけ大変役立っています。
おかげさまで、私の市政についての関心が高まりました。

小泉文人氏については、責任も取らずに市長選挙への立候補とは、厚顔無恥も甚だしいです。
市川市民の皆様に身近な市政についてもっと知ってもらいたいです。

国政については日々新聞等での報道がありますが、私たちに一番近い市町村の情報が少なすぎます。
今回の市長選をきっかけにもっと私たちに身近な市政についての関心がより高まればと思います。

住み街ナビ編集部

ありがとうございます。

選挙については個人的に気になっていた事なので、そうおっしゃって頂けると嬉しいです。

これからもお役に立てそうな情報があれば、発信していきたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です